「蕎麦前(そばまえ)」とは、“蕎麦屋で蕎麦を食べる前にお酒を楽しむ”こと。
江戸の時代に生まれたとされる江戸っ子の食文化です。
今回はそんな大人の楽しみともいえる蕎麦前を札幌で楽しめる店をご紹介します。
どの店も酒肴に銘酒、そしてもちろん蕎麦と3拍子そろっていますよ!
ナビゲーターは札幌の蕎麦っ食いakioです!
目次
“すすきのゼロ番地”で蕎麦前「朱月菴」
すすきの発祥の地ともされるディープスポットが「すすきのゼロ番地」。ススキノアパートという築50年以上の北海道内最古の公団住宅の地下にある飲食店街です。
その中に看板もない穴場中の穴場「そばびより 朱月菴(あかつきあん)」があります。
開店は夜の19時。店内はカウンターのみの8席で、まずは店自慢の酒肴で一杯というのがこの店のお決まりです。
席に着いて飲み物を頼むとまず「お通し」、ポテトサラダなど酒好きの一品を出してくれるよ。
蕎麦前らしく「板わさ」や「そば味噌」「のり」などの定番ものに加えて、名物といえる「スジコン」(牛スジとこんにゃく煮込み)など酒肴がそろっています。

この店では「ウチは蕎麦屋ではないので、蕎麦だけのご注文はご遠慮ください」としています。
いや、この店は正確にいえば蕎麦屋ではなく、おいしい蕎麦が食べられる居酒屋。これこそが「蕎麦前」のスタイルなのです!
もちろんランチ営業などもありません。すすきのの夜に、お酒を楽しんで蕎麦で締める。そんな使い方がおすすめの店です。

締めのそばは本格派。
冷たい「せいろ」は蕎麦の香りとのど越しの良さをキリッとした辛めのつゆで味わうことができます。
なおこの店のメニューに料金は書かれていません。数品のおつまみで軽く飲んで、蕎麦で締めて3,000円台くらいが目安になります。
その名も「蕎麦屋酒 しの崎」
札幌で“蕎麦前を楽しめる蕎麦屋”といえば、「蕎麦屋酒 しの崎」はその代表的な一軒です。
何しろ店の名前に「蕎麦屋酒」、すなわち蕎麦前を楽しんでください!という店だからです。
場所は札幌市電の走る南1条通り、第2北海ビルの地下にあるよ。
店に入ってメニューを見れば、「蕎麦味噌」(税込340円)「焼き味噌」「玉子焼き」(税込530円)などの定番ものに、黒板にはその日のおすすめ料理が紹介されています。
ある日は金沢名物の「治部煮(じぶに)」がありました。

これも蕎麦屋らしく鴨肉を使い、そばつゆを活かした味付けになっており、お酒のつまみにも相性抜群のものでした。
日本酒は全国の銘酒をそろえつつ、“旨口”・“辛口”・“飲み頃の温度”などがメニューに書かれているので選びやすいでしょう。

もちろん蕎麦も自慢で、「せいろ」(税込700円)はとてものど越しのよいもの。
“締め”に食べるなら「仕上げ蕎麦」としてサービス料金(税込580円)で提供してくれます!
普通の蕎麦屋は比較的閉店時間が早いものですが、この店では23時まで(通常時)営業しています。
そんなところも“蕎麦前”向きの店としておすすめできる理由です。
「東家本店」ならゆっくり昼呑みOK!
北海道で最も系列店舗の多い蕎麦屋といえば、何といっても「東家(あずまや)」でしょう。
総本家を釧路に構え(竹老園 東家総本店)今でも北海道内に50軒近い系列店があるよ!
場所はすすきのの外れに近い西の1丁目、店内はカウンター席・テーブル席に加えて、ゆったりできる小上がり席もあります。
この店のよいところは“通し営業”であること。
これぞ“蕎麦前”、特に“昼飲み”には最適な条件で、混雑する昼食時を避けてゆっくりできます。

メニューは本家「竹老園」譲りの名物「そば寿司」(税込1,100円)や「かしわぬき」(税込630円)などが用意されるほか、酒肴の定番「板わさ」(税込500円)「玉子焼き」(税込500円)などもあります。
ユニークなのは全国の地酒の「五寸瓶」(各税込500円)を用意していること。

3本セット(税込1,350円)5本セット(税込2,100円)と「呑めば呑むほどお徳になります!」(店の説明)。
もちろん蕎麦もおすすめで、「ざるそば」(税込792円)をはじめ、東家名物の「茶そば」「らん切り(たまご)」などの変わり蕎麦も味わえます!
ランチタイムも過ぎた昼下がり、小上がりでゆっくり蕎麦前を楽しめる。
これこそがここ東家本店の良いところです。
札駅近く「黒むぎ」でオシャレに蕎麦前
札幌に来るなら利用機会の多いJR札幌駅。近くにおいしい蕎麦屋を探したこともあるかもしれません。
そんな時に便利な店が「そば切り 黒むぎ」です。
札幌駅から徒歩で4~5分、北海道大学の正門近くのビル地下にあるよ。
知る人ぞのみ知るようなまさに隠れ家、蕎麦屋だと思えないほどのオシャレ感があります。

そのメニューにはしっかり「蕎麦前」のページがあり、蕎麦屋定番のおつまみである「板わさ」(税込380円)「自家製蕎麦みその炙り」(税込380円)「いぶりがっことクリームチーズ」(税込580円)などが並びます。
さらに「本日のおすすめ」として刺身系からちょっと手の込んだ一品料理まで数多く用意されています。
「飲み放題」(100分1,500円、地酒10種類付きは2,000円)や各種コース料理もあるよ!
日本酒は全国から人気の銘柄を集めており「獺祭」(山口)「而今」(三重)「新政」(秋田)「寫楽」(福島)など酒好きには堪えられないラインアップ!
さらにワインが充実しているのもこの店の特徴で、さすがは同グループ店にミシュランの星付きフレンチがあることを窺わせます。

そして蕎麦は蕎麦粉十割の手打ち、蕎麦前の仕上げにはうってつけの味わいといえるでしょう。
円山の隠れ家「香季 清流庵」
札幌のお洒落な住宅地として知られる円山に、ひっそり店を構える蕎麦屋があります。
その店は「香季 清流庵(せいりゅうあん)」。
住宅地の奥に入った場所にあるので、初めての時は迷ってしまうかも。
入口には赤い暖簾、そのさらに奥に普通の住宅のような玄関があるので、少し入りにくいかもしれません。
思い切って扉を開けて店に入れば、ご主人のワンオペであることがわかります。

品書きには「だし巻き玉子」(税込550円)「焼みそ」(税込500円)「焼のり」(税込200円)など定番のおつまみが用意され、さらに「三点盛り」(税込700円)という気の利いた酒肴もあります。
この日の三点盛りは「揚げ蕎麦チーズ和え」「揚げ蕎麦がき」などを盛り合せてくれました。
蕎麦は「二八」(税込550円)と「十割」(税込600円)があり、さらに上品な「さらしな」(税込550円)まで。
とてもワンオペの店とは思えません。

「天ぷら」も「海老・いか・穴子」などのほか、時期により「牡蠣」や「落葉きのこ」なども揚げてくれます。
日本酒も厳選の地酒をそろえており、じっくり蕎麦前を楽しめるラインアップです。
円山の隠れ家でゆっくりと楽しむ蕎麦前、これもまた粋なものですよ!
蕎麦に銘酒「蔵美庭gravity」
2021年3月、すすきのから西14丁目への移転を機に業態を“蕎麦前”寄りにシフトしてリニューアルオープン。
その名も「蕎麦に銘酒 蔵美庭gravity(グラヴィティ)」。
すすきの時代は日本酒を中心としたBAR形態でしたが、移転後は、蕎麦前を楽しめる店であることを店名に謳いました。
日本酒は全国の銘酒が大きな冷蔵庫にスタンバイ。
都度在庫は変わっていくので銘柄のメニューは無く、冷蔵庫を覗いて注文を決めるスタイルです。
お酒に詳しくなくても、ご主人に好みを伝えればおすすめの一杯を選んでくれます。

メニューを眺めれば、「蟻巣石の碾きたてそばがき」(税込1,200円)に目を引かれ得ます。
「蟻巣石(ありすいし)」とは“蟻の巣”のような小さな穴があいた火山岩で熱を持ちにくい性質があり、その石臼では風味豊かな蕎麦粉が碾けるとされています。
そんなこだわりの蕎麦粉をシンプルに味わえる一品がこの「そばがき」なのです。
薬味に「本わさび・塩・蕎麦つゆ」の3種類を添えてくれるよ。

もちろん蕎麦もおすすめ、「もり」(税込800円)は香りの豊かさと蕎麦の甘味、そして喉越しを楽しめます。
店内もオシャレな造りで、ゆったりした気分で蕎麦前を満喫できる、そんな新しいタイプの蕎麦屋です。
女性店主による「手打ちそば みなと」
思い立った時間に食事やお酒、あるいはカフェタイム代わりに蕎麦屋はいかがでしょう?
そんな使い方におすすめの店が「手打ちそば みなと」です。
この店、昼休憩なしの通し営業なのです。
すすきの中心部の少し西、東本願寺近くの住宅地という隠れ家的な場所だよ。
この店の蕎麦は“太さ”が自慢の食べ応えのあるもの。実はこれ、女性の店主が手打ちしているのです。

メニューは「もりそば」「かけそば」(各税込750円)に加えて「かしわそば」(税込900円)「親子そば」(税込950円)などもあり、さらに「たぬき」「たまご」(各50円)「長いもとろろ」(150円)「野菜かきあげ」(150円)などのトッピングで、自分好みの蕎麦メニューが作れます。

もちろん“蕎麦前”にも対応、北海道名物「三升漬(さんじょうづけ)」は手作りで、冷奴に乗せて提供してくれます。
「三升漬」はお酒にぴったり!
日本酒はグランドメニュー以外の地酒も用意されているので、ご主人に聞いてみてください(「そばビール」もありますよ!)。
ここ「手打ちそば みなと」は蕎麦も酒も酒肴も文句なしですが、一番のおすすめは女性店主との気軽なおしゃべり。
そんなこの店の蕎麦前をぜひ楽しんでみてください!
“蕎麦屋らしい蕎麦前”なら琴似の「香凛」
札幌で“蕎麦前”を語るなら琴似の「想咲そば処 香凛(そうさくそばどころかりん)」は外せません!
札幌の日本酒好きが集まる蕎麦屋です!
この店の特徴は蕎麦屋ならではの「かえし」を活用した酒肴類にあります。
「かえし」とは蕎麦つゆのベースとなる調味料で、醤油に砂糖や味醂などを合わせて作るもの。それを出汁で割ったものが蕎麦つゆになります。

この「かえし」をおつまみの味付けに使った代表的な一品が「親鶏のかえし醤油煮」(税込580円)。
噛み応えと旨みがある親鶏をかえし醤油で煮込み、さらに味を深めています。
そして合わせる日本酒は全国の銘酒を揃えますが、特に“旨味”を重視したラインアップ。
それはまさに「かえし」の味と日本酒の旨みがピッタリ合うからだよ!
中でも愛知の「米宗(こめそう)」は(この店が)全国でも売上トップクラスという定番酒です。
もちろん蕎麦屋の定番「蕎麦味噌」(税込580円)や「厚焼き玉子」(税込800円)に各種の「天ぷら」もそろっています。

そして締めの蕎麦は香り豊かな「粗挽き」です。
お酒と酒肴をセットにした「晩酌セット」は税込1,300円からで、3種類を飲み比べることができる「利き酒セット」も組み合わせることができます(+100円)。
琴似ではここ「香凛」で、“蕎麦屋らしい蕎麦前”をじっくり味わってみてはいかがでしょうか?
まとめ
札幌で“蕎麦前”を楽しめる、おすすめの店をご紹介しました。
蕎麦前は江戸の食文化として生まれたものであり、居酒屋と違って「蕎麦屋のつまみでお酒を味わい、蕎麦を手繰って仕上げる」というまさに“大人の楽しみ”です。
ぜひ札幌で、そんな大人の“粋の世界”を体験してみて下さいね!